投資先企業紹介

有限会社 グリーンワールド八女【事例紹介】

【左から平井英治取締役、城後代表取締役、平井隆一郎取締役】

<出資先の概要(2020/11 時点)>
会 社 名有限会社グリーンワールド八女
代 表 者代表取締役 城後 博樹
所 在 地福岡県八女市
事業内容八女茶20ha(春~秋)、大麦若葉40ha(冬、水田裏作)、荒茶加工受託
出資年月1回目2004/7 ・2回目2015/10
出資金額1回目20,000千円 ・2回目35,000千円

(有)グリーンワールド八女は、福岡県で八女茶20ha(春~秋)と大麦若葉40ha(冬、水田裏作)の生産および荒茶加工受託をする会社です。

乗用摘採機や荒茶加工施設の周年利用により周年雇用を実現。地元の高齢化や後継者不在による管理不十分な茶園の管理作業を請け負いつつ、荒廃茶園を借り受けて再生し、経営面積を増やしながら大規模経営に取組んでいます。それらの取組みが評価され、2012年に農林水産祭天皇杯を受賞されました。近年は既存の取引形態に依存せず、2020年よりECでの販売や営業活動にも注力されています。

今回は、現代表取締役 城後博樹様、取締役 平井隆一郎様(前代表取締役)、取締役 平井英治様、営業マネージャーの姫野渉様の4名にお話を伺いました。

 

1.「茶畑をもっと効率よく」岩崎地区の3戸のお茶農家が結束

― グリーンワールド八女は元々いくつかのお茶農家が集まって設立されていますが、その時のことを教えてください。
平井隆一郎取締役「当社は、元々3町4町程度生産できるお茶工場が3戸集まり始まりました。元々岩崎地区には荒茶工場をやっているところが7戸あったのですが、それぞれ効率化について方向性が違っており、4戸は工場の効率化をしたいと考え、当社設立者の3戸は乗用摘採機を入れて茶畑の効率化を考えていたのです。
元々小さい圃場のお茶農家ばかりだったので、乗用摘採機や乗用型の管理機を導入するには、茶畑が隣接していないと効率が悪かったんです。だから導入前に地域の中で話をしなくてはいけなかったのですが、偶然にも圃場が3戸まとまっていたので、1戸で始めるより、始めやすかったですね。
設立当初から、取締役の入れ替わりがありますが、3人体制で運営しています。畑や工場の現場、会社全体を見る、部会対応など対外的なことをやる、と考えると責任者は最低3人必要です」

― 茶畑の効率化を図ったとのことですが、その後の変遷を教えてください。

平井隆一郎取締役「まず3戸で任意団体(岩崎茶園管理組合)を作って、平成10(1998)年に乗用型管理機を導入し、その後平成12(2000)年にグリーンワールド八女として法人化しました。
茶畑を一つの機械、一つの管理機でやっていくと、今度は工場の方の効率も悪くなってしまったので、次は工場の方も考えようかとなり、平成13(2001)年に茶の工場を建設、という風に徐々に変わってきました」

 

2.地域の農家仲間から「アグリ社を使って良かった」と聞いて

― アグリ社の出資を受けたきっかけを教えてください。
平井隆一郎取締役「アグリ社に出資して頂いたのは、平成16年です。当時日本政策金融公庫(旧農林漁業金融公庫)の福岡支店が毎年2,3回勉強会を開催していたのですが、そこでアグリ社の話を聞いたことがきっかけです。実際にアグリ社を利用している農家仲間から『使い勝手が良いと思う。借入だと決まった利息の支払いがあるけれど、この出資は毎年の実績に応じて配当金が変動するから、成長段階の会社にとっては負担感が少ないんだよ』と聞いたので、それなら検討してみようとなりました」

― ありがとうございます。収穫時期が限定的な場合もある農業においては、足元投資が先行して投資効果がでるまでにどうしても時間を要する場合があります。そうした実態があるなかで、財務基盤の拡充を必要としている成長段階の会社にとっては、非常に適した資金調達手法の一つといえるかもしれませんね。
グリーンワールド八女では、実際にどのような目的でご利用頂きましたか。

平井隆一郎取締役「当社ではこれまで2度アグリ社の出資を利用していますが、1度目は茶園の規模拡大、2度目は加工場設備と、新しい一歩を踏み出すタイミングに合わせて、財務基盤を強化するために利用しました。議決権の無い出資なので会社が乗っ取られる心配もなく安心です」

 

3.土地への愛着といい茶畑作りへの思い

― グリーンワールド八女のお茶づくりで、特に大事にしていることは何ですか。
平井隆一郎取締役「とにかく良い茶畑を作ろうという話をよくしています。いい茶畑を作らないといいものができません。加工は結果でしかないと考えているので、とにかく茶畑、畑をきちんと管理していくというところです。これが1番地域のためにもなると思います」

― 茶畑に対する思いは、やはり代々引き継いでしてお茶づくりをする中で出てきたのでしょうか。
平井隆一郎取締役「そうですね。自分で一生懸命すると土地に愛着が湧いてきますね。やはり土地に愛着が湧かないと、農業を続けていくことはおそらくできないのではないかと思います。
グリーンワールドを作って20年ほどになりますが、これを30年40年50年続けていかないといけないですよね、農業の場合は。我々も『いかに長く続けるか、続けられるか』というのは、一番取り組まないといけないと思っています。そのためには安定した収入がないと、という話ですね」

 

4.お茶工場の稼働率を上げるため、大麦若葉へチャレンジ

― 大麦若葉など、お茶以外へ挑戦された背景を教えてください。
平井隆一郎取締役「当社が工場を建設した後なので平成14、5年ぐらいから取り組みを開始しました。産地表示が色々と問題になったことと、もう一つが減肥をせざるを得なくなったことがきっかけです。環境負荷の問題で、肥料を減らすような方針があって、これではなかなかお茶の単価は上がらないため、これは何とかしないといかんということで、大麦若葉を始めたんです」

― 大麦若葉を選んだ理由はなぜですか。
平井隆一郎取締役「一番は、お茶工場の稼働率を改善するためです。当社の場合は、碾茶と秋冬番茶に取組んで、できるだけ稼働率を上げるようにしていますが、お茶だけですと、一番茶が20日間、二番茶も同じくらいで、三番茶、秋冬番茶と合わせても2ヶ月半ぐらいです。大麦若葉では12月から3月にかけて工場を使用するので、さらに2ヶ月近く工場の稼働期間が伸びました。
工場の稼働期間を伸ばしたことで通年雇用も確立することができ、通年と季節とで雇用形態のバランスが取れるようになりました」

【当社の荒茶・碾茶加工時期】

― 通年雇用の方と季節雇用の方で、仕事の内容はどのように違うのでしょうか。
平井隆一郎取締役「年間雇用している方は、畑の管理作業をしてもらっています。工場はパート職員と息子の英治がメインでやっています。季節雇用と通年雇用、両方上手に併用できれば一番いいと思います」

― ちなみに、平井さんの息子さんはいつ頃会社に入られたのですか。
平井英治取締役「私は9年前に入社しました。静岡にある試験場2年間行き、卒業後にすぐ当社に戻ってきました」

平井隆一郎取締役「息子のような20代、30代の人材もいるので、今後40年は頑張っていけると期待しています。八女の地域全体での生産者の中では若い人はまだまだ少ないので、引き続き人材の確保は課題にあると考えています」

― 最近営業の方が増えたということもお聞きしました。営業の姫野さんは地元の方でしょうか?
姫野「地元ではないですが、前職が産地問屋でした。今まではお茶を買う立場でしたが、今度はお茶を買ってもらう立場になりました」

平井隆一郎取締役「当社は市場取引が中心でしたが、昨今の情勢も踏まえて小売取引にも力を入れる必要が出てきました。営業のノウハウが自分たちに不足していたので姫野のような人材は非常に心強いです」

― ちなみに、自社での販売を始めたきっかけは何ですか。栽培の効率化や、荒茶工場を整備して生産体制が整ったことで、次は販売にも挑戦したいという流れだったのでしょうか。
平井隆一郎取締役「販売を自分達でやらなくてはいけないなというふうに考えたのは、2019年に碾茶工場を建てる少し前ぐらいです」

姫野「その頃から市場価格が低迷してきていて、いいものを作ってもなかなかこれまでのような価格で取引がされないという状況になっていました。また、今年(2020年)は新型コロナウイルス感染症の影響も大きく受けているのでこれはいけないと感じるようになりました」

平井隆一郎取締役「もともと自社販売は考えていませんでした。小売りを始めると、自分たちの荒茶を買ってくれる地元の問屋とバッティングしてしまいます。それが分かっていたので、基本的に小売はしない方針でした」

【最新の設備の導入により、国内でも珍しいお茶の色をキープできる碾茶加工を実現】

【加工場に届いたお茶は、まずこのコンベアで運ばれる】

― 実際にお客様への直接販売を始めてみて、いかがですか?
平井隆一郎取締役「今はEC販売のサービスを利用して直接販売をしていますが、消費者の反応がダイレクトに分かるのはやはり嬉しいですね。どんな点が喜ばれたのかコメントを頂けるのも有難いです。
お茶は嗜好品なので、味や香り、色など色々あっていい、画一的な基準にこだわる必要はないと思っていますが、問屋さんに出すと、グリーンワールドのお茶としての特徴を出すことは難しいです。実際に直接販売してみて、問屋さんと消費者で見る視点が違うことも実感しているところで、これから商品開発にも活かしていきたいです」

姫野「お茶の市場の相場が下がっていましたが、今回EC販売に出してみたところ、非常に良い評価を頂きました。中身の品質的にかなりグレードが良いものを出せたので、良い評価につながったと思います。今後も品質の良いものをしっかり作っていけば、消費者の方に喜ばれるかなという思いはあります」

― 今後の生産や販売において目指しているものを教えてください。
平井隆一郎取締役「土づくりにこだわった『安全で美味しいお茶』を作りたいです。消費者のイメージとしては有機=美味しいというような話がありますが、お茶の場合は特に肥料を入れないと、虫が寄ってきやすくなって、美味しいお茶になりません。『安全で美味しい』を消費者に伝わるように訴求しながら自分たちのお茶を販売していきたいです」

姫野「ECサイトで販売する際も、今言った『土づくり』や『最新の碾茶工場で加工したお茶』など、自社ならではの商品の特徴をPRするよう意識しています」

平井隆一郎取締役「あとは輸出にも力をいれたいです」

姫野「輸出先に関しては、ヨーロッパ、アメリカ、台湾などがありますが、国ごとに規制基準が異なります。例えば日本国内では残留農薬自体は規制値内でも海外では国ごとに残留農薬の基準が全部違います。当社が直接輸出というのは先の長い話になるかもしれませんが、美味しいお茶を作りつつ、そういったものもクリアしていけば販路がまた広がっていくと考えています」

5.農家にとって一番重要なのは続けていくこと。100年続けられる会社を目指して

― 最後に一言、会社としての何か夢や目標があれば教えてください。
平井隆一郎取締役・城後社長「しっかりと利益を生み出せる会社にしたいです。認定農業者の集まりでも、結局は利益が上がらないと後継者も育たないという話が出ます。
この先40年、50年、息子たちの次の世代になった時に、100年続けさせるためには、とにかくしっかりと利益を上げるということではないか、と感じています。
我々農家は続けていくことが一番重要ですから、長く続けるためにも利益を上げて会社を良くしていけるよう頑張っていきたいです」